映画「危険な関係」

愛を弄んで、運命に弄ばれる。

フランス文芸の金字塔が、魔都上海を舞台に蘇る。 絢爛、華麗に偽りの恋愛ゲームが始まる―――。

2014年1月10日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!

キャスト:チャン・ツィイー チャン・ドンゴン セシリア・チャン

監督:ホ・ジノ 製作:チェン・ウェイミン 原作:ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ「危険な関係」(角川文庫) 脚本:ゲリン・ヤン 英題“Dangerous Liaisons”/2012/中国/110分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:伊東武司/G (c)2012 Zonbo Media 宣伝協力:シナジー・リレーションズ 配給:キノフィルムズ

「危険な関係」とは、フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロが発表した小説で、18世紀後半のフランス貴族の社交界を舞台に、プレイボーイの子爵と策略家の侯爵夫人が貞淑な人妻を恋愛ゲームに巻き込んでいく模様を、書簡形式で綴った文芸小説。

そのデカダンな世界観とスリルに満ちた恋愛駆け引きは、2世紀の時を超えて世界各国の映画人に今なお愛され、アカデミー賞®4部門に輝くスティーヴン・フリアーズ監督の『危険な関係』(1988)、ペ・ヨンジュン主演の『スキャンダル』(03)など、数々の名作・話題作が生みだされている。 そんな恋愛文学の金字塔を、魔都と呼ばれた1930年代の上海を舞台に移し新たに蘇ったのが本作『危険な関係』である。

聖女のような高潔さと知的な美しさに溢れた未亡人に扮するのは、ハリウッドでも活躍する中国No.1の国際派女優、チャン・ツィイー。恋の炎を呼び覚まされ、情熱的な女に変貌していく過程を気品たっぷりに演じる。そんな彼女と対極をなす妖艶な悪女に扮するのは、香港映画界のトップ・スター、セシリア・チャン。
そして放蕩生活を送るプレイボーイに、韓国を代表するビッグ・スターのチャン・ドンゴンが扮して、自らが仕掛けた恋のゲームに足をすくわれる男の悲しさを、観る者の心に強く焼き付ける。監督は『八月のクリスマス』、『四月の雪』などの女性映画の名手として知られる名匠ホ・ジノ。アジアエンタメ界から最高峰の顔ぶれが集結した。

ため息がでるようなドレスの数々、精巧で華麗なインテリア――西洋と東洋が混ざり合う上海を舞台に繰り広げられる、煌びやかな愛の駆け引きが交錯するロマンスの決定版!

 1931年の上海。莫大な資産を持つ富裕層がパーティに明け暮れる享楽的な生活を送っていた。女性実業家のジエユーと裕福なプレイボーイのイーファンは、今日も人の心をもてあそぶ悪巧みをしていた。ジエユーは自分を捨てた男が年端もいかない少女と婚約したことが許せず、少女を寝取って欲しいとイーファンに持ちかける。しかし百戦錬磨の彼が目を付けたのは、亡き夫の遺志を継ぎ奉仕活動をしている貞淑なフェンユーだった。

2人は、イーファンが彼女をベッドに誘い込むことに成功すれば、ジエユーはイーファンのものになる。失敗したら、イーファンの土地がジエユーのものになるという、淫らで恐ろしい賭けをする。そして危険な恋愛ゲームの幕が切って落とされた。

 すべてを意のままに動かそうとする野心家のジエユー。そんな彼女を支配することに欲望を燃やすイーファン。2人の悪魔的な企みに、純粋な心をもてあそばれるフェンユー。3人の間で繰り広げられる危険に満ちた愛の駆け引きの行く手には、予測をはるかに超えた衝撃的な結末が待ち受けていた・・・。

チャン・ツィイー

北京出身。99年、チャン・イーモウ監督の『初恋の来た道』の可憐な主人公で映画デビュー。この作品でベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞し、次作のアン・リー監督『グリーン・デスティニー』(00)が、アカデミー賞外国語映画賞を受賞、一気に世界の脚光を浴びる。05年の『SAYURI』で、英国アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、アジアのみならず世界のトップ女優の地位を不動のもとした。代表作として『HERO』(02)、『LOVERS』(04)、『女帝[エンペラー]』、(06)、『グランド・マスター』(12)などに出演。
愛を胸に生きる高潔な聖女 ドゥ・フェンユー
優しく寛大な女性。夫は著名な教育者で、彼女は心の底から彼を愛し、尊敬していた。未亡人となっても再婚する意志はなく、夫が行っていた奉仕活動に身を投じ、北東部からやって来る避難者たちの手助けを行う。彼女は自分の感情に対して正直なため、ようやくイーファンに対して心を開いた時は、燃えるような情熱で彼を愛そうとする。

チャン・ドンゴン

ソウル出身。92年TVドラマで俳優デビュー。01年に『友よ チング』で青龍映画祭人気スター賞、アジア太平洋映画祭主演男優賞を受賞。韓国で記録的なヒットとなった『ブラザーフッド』(04)で青龍映画賞 主演男優賞を受賞した。その後超大作の『タイフーン/TYPHOON』(06)、『PROMISE プロミス』(06)、ハリウッド作品の『決闘の大地で』(10)、最新作はオダギリ・ジョーと共演した『マイウェイ 12.000キロの真実』(11)などに出演している。
百戦錬磨のプレイボーイ シエ・イーファン
上海の有名なプレイボーイで裕福な家庭の息子。優雅で親しみがあり、魅力的かつ機知にも富んだ彼は、女性を口説くために生まれてきたような男である。しかし誘惑のゲームに没頭し、最初に愛した女性であるモー・ジエユーと、純愛の相手であるフェンユーとの間で揺れ動き、自分を見失う。

セシリア・チャン

香港出身。99年、チャウ・シンチーの『喜劇王』のヒロイン役に大抜擢され映画デビューを飾る。『星願 あなたにもういちど』(99)で香港電影金像奨最優秀新人賞を受賞、『忘れえぬ想い』(03)の演技で香港電影金像奨最優秀主演女優賞を受賞した。05年、中国・日本・韓国で合作されたチェン・カイコー監督『PROMISE プロミス』では、絶世の美女傾城役を演じた。歌手としても活躍している。
征服することしか知らない女 モー・ジエユー
銀行の重役として成功を収めた夫の未亡人で、社交界の中でも抜きん出た存在感を持つ。人間の愛がどのようなものか熟知しており、抜け目なく人生や社会を見ている。自尊心と欲しいものを手に入れようとする欲望は人一倍強い。心の奥底ではイーファンを愛しているが、傷つき捨てられることを恐れ、自分に対する愛情を確かめるため、フェンユーを生け贄に選ぶ。

リサ・ルー

北京出身。女優でありプロデューサーでもある。ゴールデン・グローブ賞の審査員メンバーの1人。1958年ハリウッドで女優活動を始める。87年にベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』で西太后を演じる。その後も『ジョイ・ラック・クラブ』(93)、『ラスト、コーション』(07)、『2012』(09)といった作品で、世界で活躍する中国人女優である。
ドゥ・ルイシュエ婦人
イーファンの祖母。裕福で社会的地位があり、教養もある。西洋の思想に影響を受けていて、無関心なフリをしながら、自分の周囲の人々の揺れ動く感情を注視している。

ショーン・ドウ

西安出身。2010年チャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』に大抜擢され注目を集める。端麗な容姿と演技力を兼ね揃えた俳優で、出演作である『Racer Legend』(11)、『愛のしるし』(11)などで高評価を得ている。2012年のゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされたチャン・イーモウ監督の『金陵十三釵』では、勇敢な兵士を演じている。
ダイ・ウェンジョウ
芸術大学の学生。貧しい生まれだが、才能豊かで、自分の意思をしっかりと持っている。ベイベイの美術教師であり、彼女への情熱を隠しきれなくなっている。

「危険な関係」
ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ・著
/竹村 猛・訳(角川文庫)

書簡体の長編小説。十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦か―。奔放な恋愛ゲームに明け暮れた、最後のフランス貴族文化の爛熟と退廃を通して、エゴイズムと献身、人間の心の闇と普遍的な真実の愛の形を描く、不朽の名作。

上流社交界に渦巻く不道徳を描いたラクロのこの小説を、当時の人々は社会を乱す悪書と眉をひそめつつ、しかし熱狂的に愛読したという。

中国版『危険な関係』

10年前から企画され始め、15億円もの制作費をかけて製作された『危険な関係』は、2012年9月27日に中国で公開され、現地の全国スクリーンシェア20%を記録した。大型のライバル作を抜き、当時の座席シェアと観客動員数で1位を占めた。韓国人監督が演出した映画としては、初めての記録であり、そもそも、欧州の古典文学を原作に中国映画が作られたのも初めての試みだった。発展目覚しい中国映画界では、輸入するだけではなく輸出する側に立とうという動きが試されている。今後さらに多くの外国人監督たちが、中国市場に参入して映画を撮影する日が来るかも知れない。

1930年代の上海の再現

本作は、18世紀のパリや19世紀のウィーンの壮麗なオペラ座や、ベッドを渡り歩く貴族たち、上流階級の華やかな舞踏会等を1930年代の上海に投影し、再現された。ロケ地は、上海のダウンタウンにある劇場やダンスホールも装飾を付け加えて使用されたが、メインの舞台となる豪邸は、南京の郊外に撮影用として一から建設された。 また、全てオートクチュールで仕立てられたベルベットやシルクでできた華麗なドレスの数々と、マホガニーや、金箔やステンドグラスから構成されたアール・ヌーヴォー調の豪華な家具や建築物など、そのため息が出るようなゴージャスな美術の世界に観る人は魅了されるだろう。

ホ・ジノ監督コメント

『危険な関係』は、これまでに何度もリメイクされてきたが、小説で描かれたフランス革命前夜の魅力と刺激に溢れる時代は、1930年代の上海と同じで、この2つの要素が合わされば面白くなると考えたんだ。時代考証については当時の上海の上流階級の人々がどんな歯磨き粉で歯を磨き、赤ちゃんにどんなミルクを飲ませていたのかまで調べ上げた。ジエユーに『良友』を読ませたり(当時爆発的にヒットした写真グラフ誌)、キャラクター造形にも役立てた。いざ撮影に入ると、同時に3本の映画を撮っているくらい大変だったけどね。観客に、この映画を見てインスパイアされたと言われるよりは、深く考えてもらいたい。肉欲と真の愛についてね。それがこの映画の目的なんだ。

チャン・ツィイー コメント

原作の小説が大好きでした。幾度も映画化されているけど「危険な関係」は俳優にとっても挑戦意識を呼び起こす作品なんだと思います。 ロケ地のお屋敷まで毎日車で一時間以上もかけて通いました。幸せな人なら貧しい状況に置かれていようがお屋敷に住んでいようが幸せな人生を送れるもの。でも自分の人生に不満を抱えていれば世界一の豪邸に暮らしていたとしても与えられたものを楽しめない。ラストシーンの撮影をしている時、そんなことを感じました。物質的な生活は確かに重要です。でも、精神生活のほうがより重要で豊かなものなのです。

チャン・ドンゴン コメント

これまでの僕の役柄やイメージを覆すような演技をしたいと思っていた時に、この作品のオファーを受けました。悪役と言ってもいいと思いますが、自分の枠を破りたかったし、観客が僕に期待していないものを見せたかった。キスシーンなど、僕も不思議ですがこれまであまり演じた経験がなかったんです。中国語のセリフは、とにかくものすごい集中力を発揮しなければならなかった。寝ずにセリフを覚えて次の日に現場に行ったら、監督がセリフを変えてしまい、もう一度覚え直したりもしましたけれど(笑)撮影には大変な苦労がありましたが、このキャラクターを演じることができたのは僕の誇りです。

セシリア・チャン コメント

私の演じた役柄の恋愛はとても悲しいものでした。愛し合っているのに、その愛から安らぎを得られることがなく、成就することもない。とても空虚で、自尊心を欠いたキャラクターで、演じるのに最初は迷うこともありました。でもホ・ジノ監督は素晴らしかった。言葉の壁は全く問題にはならならず、監督は簡潔にディテールを説明して、私(ジエユー)がどんな女性かを教えてくれました。問題は睡眠不足だけでした。女性は美しいものが大好きです。私たちの衣装はどれもゴージャスで素晴らしかったので、撮影がどんなに大変でも報われたような気がします(笑)

危険な関係(1959)

監督:ロジェ・ヴァディム
出演:ジェラール・フィリップ, ジャンヌ・モロー, ジャン・ルイ・トランティニャン
プレイボーイとしてならしたロジェ・ヴァディム監督が、設定を現代のパリ社交界に置き換え、お互いの浮気を認め合う外交官夫妻の恋愛ゲームを描く。全編アート・ブレイキーのジャズナンバーに彩られている。

華麗な関係(1976)

監督:ロジェ・ヴァディム
出演:シルヴィア・クリステル, ナタリー・ドロン、ジョン・フィンチ
ヴァディム監督が自らセルフ・リメイクした「危険な関係」第2弾。前作の現代設定から19世紀初頭のパリを舞台に変えて、華麗な コスチュームと2大女優のセクシーな競演が眩しい作品。

危険な関係(1978)

監督:藤田敏八
出演:宇津宮雅代、片桐夕子、三浦洋一
舞台を現代日本に置き換えた日活ロマンポルノ版の『危険な関係』。脚本は新藤兼人が手がけた、びっくり作。DVD未発売。

危険な関係(1988)

監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:グレン・クローズ, ジョン・マルコビッチ, ミシェル・ファイファー
イギリス人監督のフリアーズがクリストファー・ハンプトンの舞台作を元にハリウッドのキャストを多数起用して映画化。アカデミー賞®脚色・衣裳デザイン・美術賞を受賞した。

恋の掟(1989)

監督:ミロス・フォアマン
出演:コリン・ファース, アネット・ベニング、メグ・ティリー
18世紀のフランスを舞台に、「アマデウス」のミロス・フォアマンがメガホンを取り、「存在の耐えられない軽さ」のジャン・クロード・カリエールが脚本を務めた。フリアーズ版と製作がかち合ったために、時期をずらして公開された。

クルーエル・インテンションズ(1999)

監督:ロジャー・カンブル
出演:サラ・ミシェル・ゲラー、ライアン・フィリップ、リーズ・ウィザースプーン
舞台を現代のアメリカに移し、血の繋がらない姉と弟がお互い惹かれ合いながらも残酷な恋愛ゲームに身を投じていく、青春サスペンス。続編で2と3も作られている。

危険な関係(2003)

監督:ジョゼ・ダヤン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ, ルパート・エヴェレット, ナスターシャ・キンスキー
舞台を1960年代の南仏リヴィエラに移し大胆に脚色された。TV版ミニシリーズながら、豪華出演者が注目を集めた。

スキャンダル(2003)

監督:イ・ジェヨン
出演:ペ・ヨンジュン, チョン・ドヨン, イ・ミスク
18世紀の李王朝時代の後期の両班社会に置き換えた、韓国版。ペ・ヨンジュン初主演映画で、韓国では公開当時、興収・動員ともに新記録を樹立した。

監督:ホ・ジノ
製作総指揮:チェン・ウェイミン
脚本:ゲリン・ヤン
撮影:キム・ビョンソ
編集:ナム・ナヨン
音楽:チョ・ソンウ
美術:ウォルター・ウォン
製作:ゾンボメディア

監督:ホ・ジノ

ラブストーリーの第一人者であり、揺れ動く感情の繊細な描写が特徴的。1998年に自らが脚本を手がけた『八月のクリスマス』で監督デビューし、カンヌ国際映画祭の国際批評家週間部門の作品として招待される。さらに韓国のオスカーとして知られる青龍映画賞では、最優秀作品賞と新人監督賞を含む5部門を受賞した。続く2作目『春の日は過ぎゆく』では、東京国際映画祭で最優秀芸術功労賞を受賞し、釜山国際映画祭では国際映画批評家連盟賞を受賞。05年の『四月の雪』はトロント国際映画祭に招待され、サン・セバスチャン国際映画祭のオフィシャルセレクションにも選ばれた。07年の『ハピネス』では、批評家と一般の観客の両方から賞賛を得て、第28回青龍映画賞で監督賞を受賞した。
フィルモグラフィ
『危険な関係』(2012)
『きみに微笑む雨』(2009)
『ハピネス』(2007)
『四月の雪』(2005)
『春の日は過ぎゆく』(2001)
『八月のクリスマス』(1998)

脚本:ゲリン・ヤン

中国出身の女性作家。全米脚本家組合のメンバーであり、アカデミー賞脚本賞の審査員、さらには中国の脚本家組合のメンバーでもある。彼女の作品の多くが映画化されていて、小説が原作となった『シュウシュウの季節』(99)(監督ジョアン・チェン)は、1999年に金馬奨で7部門を受賞し、同年の名画ベスト10に選ばれた。さらに彼女はチェン・カイコーが監督した『花の生涯 梅蘭芳』(09)では脚本を執筆。また彼女の小説が原作になっているチャン・イーモウ監督の最新作『金陵十三釵』は、2012年のゴールデン・グローブ賞の最優秀外国作品賞にノミネートされた。

製作:チェン・ウェイミン

製作プロダクションであるゾンボメディアの代表である中国人プロデューサー。彼が製作を務めた2作品は、カンヌ国際映画祭でそれぞれ受賞していて、『鬼が来た!』(00)は審査員特別グランプリを、『クライング・フィスト』(05)は国際批評家連盟賞を受賞した。また『きみに微笑む雨』は2009年ヴェネチア国際映画祭のクロージングフィルムに選ばれた。